「自分」や「人間」に対する意識の変化がもたらした影響

2024年10月21日

病気を克服する前後で変わったことの一つに、「自分」や「人間」に対する意識が挙げられます。個人的な価値観の変化と言えばそうなのですが、同じような状態に陥っている方にとって、参考になるところがあれば幸いです。

「自分」に対する意識の変化については、より正確な言い方をすれば、「自分という存在」をどのような仕方で認識しているか、自己認識のあり方の変化とも言えます。病気を克服する前後で自分でも自覚できるその変化が、どのようにして心のあり方に影響を及ぼしたのか、お話ししたいと思います。

「人間」に対する認識の変化は、病気を克服する以前には、「人間」に対するイメージ、あるいは「人間の心」に対するイメージが、心のあり方に影響を及ぼしていたように思います。このあたりを具体的にお話しできればと思います。

「自分」に対する意識の変化

病気を克服する以前には、他の人の視線を気にしたり、他の人が近くにいると緊張したりする傾向がありました。この「他の人に対する意識」は、病気のときに強くなり、傍目にも明らかだったようで、「なぜそこまで他人の視線を気にするのか」と言われたこともありました。

若い時分には外見を気にしたりしますが、特に目立つような恰好をしているわけでもないのに、たとえば偶々近くにいた見知らぬ人に対しても、この人には自分がどのように見えているのだろうか、どこかネガティブに見られていないだろうか、ということを気にしてしまうのです。

そして、特に視線を向けられていなかったり反応がなければ、自分は問題ないものとして安心し、何か反応、例えばネガティブに見える表情などの反応があれば自分の内で様々に解釈し、それによって心を大きく振幅させるということを繰り返していました。

このような状態のため気が休まることもなく、心も体も常にどこか緊張している状態が続き、そのためか息苦しさを感じることもありました。

それではなぜこのように過度に他の人の視線、どのように見られているかを気にしていたのかと言えば、そこには次のような事情があったのではないかと思っています。

病気を克服したときに、これらの傾向も心や体の緊張もすべて無くなったのですが、病気を克服する前後で大きく変わったと実感することの一つに、「自分」を捉える意識が大きく変化したことが挙げられます。あるいは「自己認識の方法」が大きく変化した、という方が適切かもしれません。

病気を克服する以前の「自分」に対する意識を一言で表すとすれば、あまりにも過度に相対的な自己認識をしていたということです。相対的な自己認識とはつまり、

 

克服する以前は、自己認識の方法が過度に「相対的」だったということです。相対的とはつまり、他の人との関係性によって、他の人からどのように認識されるかによって、自分がどのような人間であるか意識するというものでです。

より通俗な言い方をすれば、「他の人から自分がどのように見られているのか気にするということです。

これは人間が社会生活を送るうえで、常識的な自己認識のあり方であって、社会生活を送るうえで必要なものであるので、この相対的な自己認識がまったく無くなった、というわけではありません。

 

 

これは社会一般の自己認識のあり方で、この方法を行うことによって相対的な自己認識が無くなったわけではありません。しかし根底に自分という存在の「本質」を意識することによって、相対的な自己認識がもたらす心の揺らぎが大きく減ったと言えます。

 

相対的な自己認識は、他者、社会から自分がどのように認識されているかに影響されるものです。そしてこれは、自分という存在の基準が、他者にあることになります。他者からの認識は当然、流動的に変化するものであり、自分という存在が変化に晒された不安定な状態になります。

自分という存在が大きな影響を受けるとなれば、心の振幅も大きくなります。このため、他者の視線を自分という存在に影響を与えるものとして、気にしていたように思います。

自分という存在の「本質」を認識するという方法は、自分という存在の根底に影響を受けることなく、揺らぐことのない「本質」を認識するものです。一方で他者がもたらす毀誉褒貶などの相対的な自己認識は、流動的な「現象」であると自覚することによって、心が根本から揺らぐことが無くなりました。

例えるならば、水面に浮かぶ浮草は、水面に波紋があれば影響を受けてどこまでも流されてしまう恐れがあります。しかし、湖底に根を張った状態ならば、影響は限定的で流されてしまうことはありません。

病気になる以前からあった他者の視線を気にする、他者と一緒にいると緊張するという傾向についても、病気の克服にあわせてすべて無くなりました。それはこの方法によるものと確信しています。(この内容に関連する記事はこちら

「人間」に対する意識の変化

自己認識のあり方が、自分の心に影響を及ぼすということはわかりやすいと思います。そしてこの人間観、人間という存在に対する認識も、心に大きく影響を及ぼしていたように思います。

自分という存在は当然、人間という存在です。その人間をどのような存在として認識しているかということは、自分という存在の前提条件として、心にも暗黙に影響をしているということです。

世間一般の人間観として、人間とは脆く弱い存在である、相反する感情をもった矛盾した存在である、といったものがあります。そしてまた、そのような存在として積極的に認めていこうというものです。

この方法を行うようになるまでは、上記のような人間観に違和感を持っていませんでした。こうした人間観をモチーフとした文芸や学術などは巷間でよく目にするところです。病気のときには、自分の状態を省みて、上記のような人間観に共感したことがありました。

しかしそれは、共感を通り越して没入に近く、自分の病気の現状を積極的に認めることにつながってしまい、その前提条件から抜けられなくなるのです。

自分という存在の「本質」に対する認識は、この囚われから大きく抜け出すことにつながりました。そしてこの「本質」は、人間という存在にも当てはまり、人間観が大きく変わったということがあります。

脆くて弱く変化するもの、相反する感情といった「現象」に囚われることなく、自らの「本質」に意識を置くことが、揺らぐことのない心につながったと感じています。

否定的暗示を受けない

否定的暗示という言葉を用いましたが、以下のようなものです。一つの体験を例に、お話しさせていただきます。

病気だったときに一時、心理カウンセリングを利用したことがありました。カウンセリングに通いながら、その都度カウンセラーに対して自分の心の状態をお話しすることになります。

当初は自分の状態を理解してもらえて良かったと感じていたのですが、ある時から苦痛を感じるようになりました。

カウンセリングでお話しする自分の状態というのは、良い状態のことばかりではありません。その自分が話している内容に、自分が暗に囚われてしまっているからだ、ということに気がつきました。

例えば「自分は暗い心の人間だ」と言っている人は、明るい心にはなりません。仮に一時、何か良いことがあって明るい気分になったとしても、先のように自認している限り、また元の状態に戻ってしまうのではないでしょうか。

自分の状態を話すということは、この自認をし続ける行為になります。

これは自分が話者の場合に限らず、他者から「顔色が悪い」と言われた場合にも、実際の自分の状態に関わらず、自分は具合が悪いのだろうと思い、そのように自認してしまうことがあります。

このような何気ない日常の中にも、意図せずに、自分の状態を否定的に暗に決めてしまう作用があります。このことを、ここでは否定的暗示と呼んでいます。

普段から否定的な言葉を使わず、肯定的な言葉を使うよう推奨する方もおられます。それも良い方法だと思います。また、上記のような否定的暗示という作用を自覚することで、その影響を軽減できるということもあります。

自分という存在の「本質」に意識を置く方法では、自らの「本質」が完全であり変化しないものと意識することで、根本的にこの否定的暗示を受けなくなります。否定的暗示を持つ言葉などの「現象」を一括してキャンセルし、根本的な影響を受けなくなったことも、病気の克服につながったと思っています。

記事のまとめ

メイン記事「うつ病、パニック障害で揺らがない心にする方法」で紹介している方法によって、なぜ病気を克服することができたのか。管理人が思うところのお話しは、以上になります。

ここでお話ししたことが克服できた原因のすべてではありませんが、自己認識のあり方や人間観については、病気にかかる前と後で大きく変わったと実感している部分であり、心の状態にも影響したものと思います。

なお、社会やカウンセリングへの批判と受け取られそうな部分もあるかもしれませんが、それが目的ではないことを念のため申し添えます。ご参考になるところがあれば幸いです。


著者・管理人:柊 基博(Hiiragi Motohiro)


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