《会食恐怖症》を克服した方法について

2024年6月10日

《会食恐怖症》という言葉を、最近になって聞くことがあります。文字どおり、他人と一緒に食事ができなくなるというものです。

私はうつ病、パニック障害になる以前から、この症状に長い間、苦しんだことがありました。そして、うつ病などを克服したときにこの症状もなくなり、以後、現在に至るまでありません。

今回はこの《会食恐怖症》に焦点を当てて、どのような方法で脱することができたのか、以下、お話ししてみたいと思います。

具体的にどのような状態だったのか

《会食恐怖症》とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

大学生だったときの話ですが、学生食堂で友人と一緒に昼食を摂ろうとします。いつもその途端、非常に緊張して吐き気が生じ、食事が喉を通らなくなるのです。

これは突然に陥ったというものではなく、以下のような前兆がありました。

幼少時より転居することが多かったのですが、新しい環境になる度に、胃部が痛くなったり食欲が減退したりしました。学校の給食でも食事が喉を通らなくなったのですが、周囲から奇異の目で見られないよう、無理して食べていました。

奇異の目で見られないよう、というのは、食事を残さないという教育があり(当然であり理解できるのですが)、体調が優れない場合でも食事を残しづらく感じ、残す場合には都度、教師の了解を求める学校もありました。

自宅ではこれらのプレッシャーもないので精神的に楽なのですが、学校の給食の時間には、非常に苦痛を感じるようになりました。時間の経過とともに環境に馴れてくれば、症状も緩和されて普通に食事できるようになるのですが、転居したら症状が戻る、ということを繰り返していました。

高校生活の後半に差しかかった頃から、慢性的に学校での昼食では吐き気を感じ、握飯を1個か2個のみ食べるという状態が続くようになりました。この状態は大学への進学後も変わらず、毎日、学生食堂で少量の麺類を食べるという生活が続きました。

麺類は量が少なく、また汁気で喉に流し込むための選択だったのですが、極度の緊張と吐き気から一口、二口ほどしか食べられないこともあり、友人が一緒でない場合でも、他人の目がある外食時には同じような状態になっていました。

食事が喉を通りにくいため細々と食べる様子となり、友人などに奇異の目で見られないか、あるいは周囲は楽しく歓談しながら食事する中で、自分は吐き気に悩まされながら完食できるか心配し、周囲の場の空気を壊しているのではないか、食事を残せば店に対しても失礼になるだろう、といった否定的な想念や不安感に悩まされもしました。

そしてこの頃には冒頭でお話ししたように、非常に緊張して吐き気が生じ、食事がまったく喉を通らず、まさに会食が恐怖であり苦痛であるという状態でした。

さらに駄目押しで、学生食堂や外食店といった「場所」にも入れなくなりました。入ろうとしたり、近づいたりするだけで体は冷えて脱力したように感じ、吐き気が生じたためです。

苦痛ならば食べなければよい、ということで昼食を食べずに過ごすこともありました。しかし空腹感が無くなるわけではありませんし、立ち眩みも度々、起こすようになっていました。自宅で独り食事することは問題がないので、授業を早々に切り上げて帰宅することもありました。

この状態は心理面にも悪影響があって、食事という日常の行為ができない自分は、今後、まともな社会生活が送れないと不安を感じるようになりました。事実、友人との行動にも支障をきたし、異性との食事もできず、自信を喪失する状態でした。

病院には行かなかったのだろうか、と疑問に思われた方もあるかもしれません。

幼少時から食欲の減退で内科を受診することはあったですが、検査しても異常は見つかりません。消化を促す薬が処方されるのですが、さほど効果はありませんでした。大学生のときにうつ病などの診断を受けたことから、精神薬の投薬によって友人と一緒に少量の麺類が食べられる程度には回復しましたが、苦痛があることには変わらず、薬の量が増えても大きな改善はありませんでした。

少し長くなりましたが、以上が、当時の具体的な症状です。

幼少時からの前兆を含めれば、長い期間続いたことになります。一種の体質であって、今後も良くならないだろうと諦めたこともありました。

しかし先にお話ししましたが、うつ病などの克服と同時にこの症状は解消してしまい、以後、まったくありません。それがどのような経緯と方法であったのか、次にお話ししてみようと思います。

どのような経緯と方法で解消できたのか

投薬などによってもなかなか大きく改善しなかった《会食恐怖症》ですが、あるきっかけとなった体験によって快方に向かいました。

《会食恐怖症》を解消するきっかけとなった体験、それは、気功の体験でした。(体験の詳細は、別の記事(→記事)にまとめています。興味のある方はご覧ください。)

うつ病などの投薬治療が重く、他の方法もということで偶々始めた気功でしたが、しばらく続けた頃に以下の出来事がありました。

あるとき気功教室で練功を終えた後、外食店に入りました。この頃には徐々にリハビリを兼ねて知人と外食店に入るようにしており、この時もやや緊張はしたものの、スムーズに入ることができました。外食店に入るときに起こる体の緊張、吐き気などは一種の体の条件反射、癖のようになっていましたが、このときには出ませんでした。

気功を練功した後には、温かな気が体全体に流れて力が抜け、リラックスした状態になります。逆に体が緊張して強張ったり、冷えたりしているときは、気が流れにくい状態にあります。このときには気が流れて緊張しにくい状態であったので、いつもの反応は出にくかったものと思います。

そして練功すると自然に腹式呼吸となるため、胃腸の動きが活発になります。このときも食欲を感じたので、定食を注文しました。

先ほどお話ししたように、外食店では緊張と吐き気によって一口、二口しか食べられなかったものが、いつもの体の反応もなく、このときには定食を完食しました。この出来事は、現在もよく覚えています。

この後、外食の機会にやはり体の反応が出ることもありましたが、練功後の体の状態で食事をするという成功体験を繰り返していくことで、体の反応が出ることもなくなっていき、会食も問題なくできるようになっていきました。

また、メイン記事(→記事)でもお話ししていますが、会食のときに生じるいつもの体の反応(極度の緊張や吐き気)があるとき、体の気がどのようになっているのか。先ほどお話ししたように、体の気が流れにくくなっていることもありますが、気功を続ける中で、このときには気が全体として頭へ上がった状態になっていることに気づきました。

しかし練功した後には気が下がって、丹田(下腹部分)に下りている状態になっています。このように、どのような状態が体のリラックスにつながっているのかがわかるようになったということも、体の反応の解消に寄与したと思っています。

一種の体質なので癒ることはないと思っていたものが、長年蓄積された体の反応によるものであり、そしてその状態が意外にもすぐ解消されたことは、自分でも驚きました。

うつ病、パニック障害の克服と同時期になったことについても、様々な症状が「気が上がる」ことで生じているという、同じ原理によることに気づき、対処方法も同じだったからということもあります。

また、気功を体験する中で、気を下げる方法として呼吸法を修得しました。こちらも有効な方法であり、別に記事(→記事)をまとめていますので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。

なお、《会食恐怖》によるやや強迫的な思い癖、周囲から奇異の目で見られたら等々も、自然に気にならなくなりました。

緊張して気が頭に上がれば頭が過熱状態になり、様々なことを思い巡りやすくなりますが、気が体をめぐって丹田(下腹部分)に下がれば、リラックスし、心は自然に穏やかな状態になっていきます。そもそも会食できるという成功体験があれば、気にする必要も無くなります。

元々、周囲の目を気にする傾向があったのですが、この頃には、周囲からの影響を受けにくくする心の意識づけの方法も得ることができました。それが《会食恐怖》の解消に寄与した部分もあったかもしれません。その方法も別の記事(→記事)にまとめていますので、必要があればご参照ください。

以上が、私が《会食恐怖症》を解消した経緯と方法になります。

***

今回の記事は以上ですが、いかがだったでしょうか。

前兆となる期間を含めれば長い間悩まされた症状でしたが、偶々気功を体験したことから解消につながり、症状が戻ることはなく、日々会食を楽しく行っています。ご覧の皆さんの参考となる部分があったならば、幸いに思います。


著者・管理人:柊 基博(Hiiragi Motohiro)


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